2026年7月末の平日、文京区本駒込の東洋文庫ミュージアムにて、9月23日(水・祝)まで開催予定の企画展『「怖い」本』に行ってきました。
本展は、死後の世界や地獄、妖怪などの「怖いもの」だけでなく、災害や病気、事件、刑罰など、人々が時代や地域ごとに恐れてきたものを、さまざまな資料を通して紹介する企画展です。
なかでも、べたきち夫婦が特に怖いと感じたのが『中国の刑罰』。
生々しい挿絵で描かれた刑罰を目にすると、「実は世の中で一番怖いのは人間なのでは……」と思ってしまいました。
お化け屋敷や妖怪などのホラー系が好きな方はもちろん、世界の文化に興味のある方、そして暑い夏にヒヤッと涼しくなりたい方にもおすすめです。
東洋文庫ミュージアムは、べたきち夫婦にとって比較的ご近所なのですが、実は今回が初訪問。
東洋文庫を代表する『モリソン書庫』の圧倒的な存在感には、長い年月をかけて受け継がれてきた歴史の重みを感じました。
『「怖い」本』だけでなく、本そのものが好きな方にも必見です。
本記事では、『「怖い」本』を実際に訪れて感じた見どころや、混雑状況、所要時間、バリアフリー情報などを、べたきちの視点でご紹介します。
他のミュージアムの記事、上野の記事、谷根千の記事、障がい者割引の記事はこちら。
※トップ画像は、歌川国芳『安達原一つ家の図(1856年)』。鬼婆伝説を描いた浮世絵。
※写真撮影は可能。動画撮影、フラッシュの使⽤、⾃撮り棒、三脚等の撮影補助機材の使⽤は禁止。
※訪問前に東洋文庫ミュージアム公式サイトで最新の情報を確認してください。
※記事内の情報・価格は、訪問当時のものです。

『九相図巻』が描かれている

べたきち的見どころ
骨になれば皆同じ!《九相図巻》


まずは、本展のポスターにも掲載されている『九相図巻(くそうずかん)』。
『九相図巻』は、野外に置かれた遺体が朽ちていく過程を九段階に分けて描いた仏教絵画です。
会場に展示されていたのは、『第七 白骨連相』と『第八 骨散相』の二場面。
第七では骨がまだおおよそ人の形を保ってつながっているのに対し、第八ではそのつながりも崩れ、頭の骨が体から離れて転がっています。
同じ「骨だけになった状態」でも、連なっているか散らばっているかで一段階分かれているところに、この絵の細かさを感じます。
キャプションに書かれていた「どんな美人も亡くなってしまえば皆同じ」という一文が、とても印象に残りました。
仏教の無常観をリアルな絵として突きつけてくる展示で、コンプライアンスだらけの世の中では、なかなかお目にかかれない表現だと思います。
怖い!?怖くない!?《日本の妖怪たち》

江戸時代前期(17世紀)写

お菊さんが虫になっちゃった!

昔流行ったね〜懐かしい!
怖い代表的存在である『妖怪』たちも多く展示されていました。
その中でも、べたきちが注目したのは、キツネの妖怪である妖狐を描いた『たまも』。
展示解説によると、平安時代後期、美しく賢い女性『玉藻の前』は鳥羽上皇に寵愛されました。
しかし、上皇が病に伏せたことから陰陽師の占いで正体が見破られ、人間の精気を吸い取る妖狐だったことが判明します。
その後、狐の姿となった『玉藻の前』は、下野国(現・栃木県)の那須野で武士たちに退治されたと伝えられています。
べたきちが小中学生の少年時代に愛読していた、マンガ『地獄先生ぬーべー(1993〜1999年)』の2巻から登場する重要キャラクターが妖狐『玉藻』だったので、元ネタに出会えて懐かしい気持ちになりました。
アニメやドラマでも放送されていたので、覚えている方も多いかも!?
ただ、『ぬーべー』の玉藻は美青年の姿をした妖狐であるのに対して、『玉藻の前』は女性なので、意外な発見がありました。
そして、退治された『玉藻の前』は、伝説では巨大な石(殺生石)に姿を変え、その後も毒気を放ち続けたとされます。
栃木県那須町にあるその殺生石は、2022年3月に真っ二つに割れているのが見つかり、当時ニュースになりましたね!
封印から解かれた『玉藻の前』は、私たちの側にいるかも!?
⇩後ろの方にいる金髪男性が、400歳の妖狐『玉藻 京介』です。

『絵本百物語(1841年)』桃山人撰 竹原春泉画
ちなみに、べた妻の推しは、川辺で小豆を洗う妖怪『小豆洗い』。
小豆の音で人を誘い出し、溝や崖に落としてしまうとか、「小豆とごうか人取って食おうか」などと歌いながら小豆を洗い、人の気をそらして川縁に誘導し落とすなどの伝承がある。
出典:小豆洗い│兵庫県 福崎町観光協会
怖い伝承もあるようですが、小豆を一生懸命洗う仕事熱心なオジサンにしか見えないですね…!(福崎町の『小豆洗い』は見るからに凶悪そう!)
妖怪に興味のある方は、『動き出す妖怪展(過去記事)』もぜひ合わせてご覧ください。

実は人間が一番怖い⋯!《中国の刑罰》

メイソン ロンドン刊
べたきち夫婦が、本展で一番怖いと感じたのが『中国の刑罰(1804年)』。
清代(1636〜1912年)の中国の様々な刑罰を、生々しい挿絵とともに記録した貴重な史料で、会場ではアキレス腱を切る刑の場面が展示されていました。
何をしたらこんな刑罰を受けることになるのか…、説明書きは見当たりませんでした。もっと残虐な刑も収められているとのことです。
今も昔も、一番恐ろしいのは人間なのかもしれません…。
先日、べたきち夫婦は、横浜美術館で開催中の『マリー・アントワネット・スタイル展』にも行ってきました(記事は今後)。
会場に、『マリー・アントワネット』の処刑に用いられたと伝わる『ギロチンの刃』が展示されていることにとても驚きました。
ヨーロッパの刑罰や『マリー・アントワネット』に興味があり、残酷な描写に耐性のある方は、マンガ『イノサン』もおすすめです。
パリの死刑執行人一族サンソン家の四代目シャルル-アンリを主人公に、フランス革命前夜の身分制度や刑罰をリアルに描いた名作です。
地震を懲らしめろ!《鯰絵》

神様タケミカヅチがナマズを取り押さえる場面を歌舞伎風に描いた

ナマズでかすぎ…!
お魚大好きなべたきちが、特に注目したのが、大ナマズが江戸時代の人々に懲らしめられている『鯰絵』です。
『鯰絵』とは、地震を起こすと考えられていたナマズを主な題材とした浮世絵のこと。
特に1855年の安政江戸地震の後、江戸を中心に大量に出版されました。
今も昔も、避けることのできない天災・地震は、人々にとって恐ろしい存在です。
そんな地震を、江戸時代の人々は「ナマズをこらしめる」という、ユーモラスな形で描きました。
『鯰絵』には、ナマズを歌舞伎の演目に見立てたり、庶民が力を合わせてこらしめたりするなど、さまざまな表現が登場します。
地震そのものをただ恐ろしいものとして描くのではなく、「みんなでナマズを退治してしまえ!」と、笑いに変えてしまう。
そこには、災害に直面した江戸の人々の、たくましさや遊び心が感じられます。
⇩過去にべたきちが釣ったナマズ。

2011年幼馴染のガリゾーと行った釣りにて

2013年タイの釣り堀にて撮影
病気はいつの世も怖い!《病絵&デカメロン》

病気を擬人化とは生成AIもびっくり!
10万人に1人の難病に罹っているべたきちが(プロフィール参照)、特に印象に残ったのが、流行した麻しんを題材にした『はしか絵』。
近代的な医療が確立していなかった江戸時代、麻しん(はしか)やコレラ、天然痘などの病気は、人々にとって命を落としかねない恐ろしい存在でした。
展示されていたのは、1862年に麻しんが流行した際に描かれた『はしか絵』の一つ。
擬人化された麻しんが人々に懲らしめられる姿が描かれています。病除けとしての意味だけでなく、当時の社会を風刺する意図も込められていたそうです。
『鯰絵』のときと同じように、恐ろしい病気をただ怖がるのではなく、病に立ち向かおうとする江戸の人々の、くじけない精神を感じました。

ボッカチオ 1960年フィレンツェ刊
そして、もう一つ興味深かったのが、世界史の授業で習い、名称がおもしろかったので覚えていた『デカメロン』。
『デカメロン』は、14世紀のヨーロッパで猛威を振るったペストを背景とした物語。
ペストから逃れるために避難した10人の男女が、10日間にわたって物語を語り合うという設定です。(初耳!)
病気が流行したら人との接触を避けて過ごすという状況は、近年の新型コロナウイルス感染症を経験した私たちにも、身近に感じられます。
病気を恐れる気持ちは、いつの時代も変わりません。それでも人々は、絵を描き、物語を語りながら、病への不安や恐怖と向き合ってきたのですね。
人生は諸行無常……!
恐竜の病気については、『ちば恐竜博(過去記事)』もぜひ合わせてご覧ください。

モリソン書庫
書庫にうっとり!《モリソン書庫》

高い天井まで届く圧倒的存在感!


東洋文庫ミュージアムが誇る、“日本一美しい本棚”とも称される『モリソン書庫』。
『モリソン書庫』とは、オーストラリア出身のジャーナリスト、『ジョージ・アーネスト・モリソン』が収集した、約2万4千冊にも及ぶ、主に東洋に関する書籍からなるコレクションです。
1917年には、三菱第3代社長で東洋文庫の設立者でもある『岩崎久彌』が、このコレクションを一括購入。その後、東洋文庫のコレクションの柱の一つとなりました。
展示解説によると、『岩崎久彌』は現在の価値で数十億円にも相当する金額で、このコレクションを購入したそうです。
その決断力と先見の明、そして貴重な本を後世へ残したことに、感服してしまいます。
実際に本棚を目の前にすると、足元から天井までびっしりと並ぶ本の迫力に圧倒されます。
これだけ多くの本が集められ、100年以上にわたって受け継がれてきたことを思うと、本そのものが歴史を紡いでいくことの重みも感じます。
写真では、この圧倒的な迫力は伝わりません。本好きの方なら、ぜひ実際にこの「本の森」に迷い込んでみてください。

約9mもある!

歴史的アジア旅行記!《東方見聞録》

マルコ・ポーロ 口述、ルスティケッロ 著
アムステルダム刊

アクセス・車いす貸出
アクセス


東洋文庫ミュージアムへは、JR山手線・東京メトロ南北線「駒込駅」2番出口、都営三田線「千石駅」A4番出口から徒歩でアクセスできます。
べたきち夫婦は、最寄りのバス停として紹介されていた都営バス「上富士前」停留所から歩いて向かいました。
公式サイトでは「上富士前」停留所から徒歩1分と案内されていますが、実際には信号のある横断歩道を渡る必要があります。
べたきち夫婦が歩いた感覚では、停留所から3〜5分ほどかかりました。
また、エレベーターを利用する場合、東京メトロ南北線「駒込駅」には改札付近に、都営三田線「千石駅」にはA5出口にエレベーターが設置されています。
詳細は各駅の構内図をご確認ください(南北線「駒込駅」の構内図、「千石駅」の構内図)。
車いす貸出

車いすは、受付のスタッフの方に声をかけると、無料で借りることができます(感謝)。
料金・障がい者割引
料金
| 入館料 | |
| 一般 | 1,000円 |
| 65歳以上 | 900円 |
| 大学生 | 800円 |
| 高校生 | 700円 |
| 中学生以下 | 無料 |
※65歳以上、学生の方は、身分証明証・学生証を提示してください。
※小学生の利用は、中学生以上の保護者の同伴が必要です。
障がい者割引【公式サイトより詳しい】
障がい者手帳保持者とその介助者1名まで、年齡に関係なく、入館料が500円に割引されます。
チケットは、インターネットではなく、当日にチケットカウンターで購入してください。
対象となる手帳について公式サイトに記載がなかったため、メールで問い合わせたところ、以下の手帳が対象との回答をいただきました。
- 身体障がい者手帳
- 療育手帳 (愛の手帳)
- 精神障がい者保健福祉手帳
- 特定医療費(指定難病)受給者証 など
その他、【公的機関(国・地方自治体等)が発行したもので、障がい又はそれに準ずる状態を証明する書類】であれば適用されるとのことでした。
ご自分の手帳が対象か気になる方は、公式サイトから問い合わせてみてください。
当日はチケットカウンターで、上記の手帳・証明書、または障がい者手帳アプリ「ミライロID」(確認済)を提示してください。
また、障がい者用駐車場が1台分用意されています。事前予約は不要です。
混雑状況・所要時間など
混雑状況

金曜日の14時15分頃に入館しました。
公式Xでは「週末はかなり混雑している」というお知らせが出ていましたが、平日だったこともあり、チケットカウンターに購入待ちの列はありませんでした。
会場内も混雑しておらず、ゆったりと観覧を楽しむことができました。
来場者は、若い方から年配の方まで幅広く、お子さん連れの家族は少なめだった印象です。
ゆったり観覧したい方や人混みが苦手な方、車いすなどを利用している方などは、平日、もしくは週末なら15時以降に訪れるのがおすすめです。
会期末が近づくと混雑が予想されるので、お盆期間を避けつつ、できるだけ早めに来館されると快適に楽しめると思います。
所要時間
14時15分から15時45分頃までの、約1時間30分かけて観覧しました。
私たちとしては、十分にゆったりと観覧できる時間でした。
週末に訪れる予定の方は、もう少し余裕を持ってスケジュールを組んでおくと安心だと思います。
バリアフリー情報


展示室は1階と2階にありますが、『「怖い」本』展の会場は2階の展示室のみです。車いすを利用の方もエレベーターで2階へアクセスできるため問題ありません。
館内は全体的に平坦で、通路幅も十分に確保されていました。
車いすからは見学しづらい展示が一部ありましたが、全体としては車いすでの見学に支障はありませんでした。
ただし、混雑時には車いすでの観覧がやや難しくなる場合も想定されるため、平日の来館がおすすめです。
先述の通り、障がい者用駐車場も1台分(事前予約は不要)用意されており、全体的にバリアフリーへの配慮が行き届いている施設だと感じました(大感謝)。
最後に

『「怖い」本展』コラボメニュー 『オリエント・カフェ』にて
本展では、妖怪・死・病気・災害・刑罰など、人々が長年抱いてきたさまざまな「怖さ」に触れることができました。
印象的だったのは、江戸の人々が地震や病気を恐れるだけでなく、『鯰絵』や『はしか絵』のように、ユーモアや絵を通して向き合っていたことです。
「怖さ」を知ることは、その時代の人々の暮らしや考え方を知ることにもつながります。
「怖い」を入口に、歴史や文化、人々のものの見方にまで広がっていく、充実した展覧会でした。
また、『岩崎久彌』ゆかりの『旧岩崎邸庭園』や『三菱史料館』、『三菱一号美術館(関連記事)』などへ訪れるのもおすすめです。
『旧岩崎邸庭園』や『三菱史料館』の近くでは、『ニワトリ展(過去記事)』も開催中です。
まだまだいっぱい見どころはあるので、ぜひ現地で個人的見どころを発見してください!
ぜひ他のミュージアムの記事、上野の記事、谷根千の記事、障がい者割引の記事もご覧ください。

※参考文献・サイト
・産経新聞社 (2022)「2つに割れた那須の「殺生石」 憶測呼ぶ「九尾の狐」伝説」 2026/8/13確認
開催情報
| 名称 | 企画展「怖い」本 |
| 会期 | 2026年6月3日(水)~9月23日(水・祝) |
| 休館日 | 会期中の火曜日 (火曜日が祝日の場合は開館し、翌平日休館) |
| 開館時間 | 10時~17時(最終入館は16時30分) |
| 入館料 (当日券) | 一般:1,000円 65歳以上:900円 大学生:800円 高校生:700円 中学生以下:無料 |
| 会場 | 東洋文庫ミュージアム (東京都文京区本駒込2-28-21) |
| 公式URL | https://toyo-bunko.or.jp/museum-exhibition/2631/ |
最後までお読みいただきありがとうございました。ソークディー!







