2025年10月4日(土)、上野の森美術館で2025年11月9日(日)まで開催予定の展覧会『正倉院 THE SHOW―感じる。いま、ここにある奇跡―』に行ってきました。
『正倉院』とは、奈良の東大寺にある宝物庫のことで、奈良時代の貴重な文化財を今に伝える建物です。
聖武天皇の遺愛品を光明皇后が奉納したのが始まりとされ、約1300年前の工芸品や楽器、染織品などが数多く収められています。
今回の展覧会では、宝物そのものの展示はありませんが、超高精細映像や『蘭奢待(らんじゃたい)』の香り体験、そして『再現模造』による宝物展示など、多彩な演出で見ごたえ十分でした。
なかでも、現代の職人たちが実際の宝物と同じ素材・技法を用いて、本来の輝きを再現した『再現模造』は圧巻の一言。
ファッションが大好きなべた妻は、篠原ともえさんデザインのドレスにかなり見入っていました(アラフォー夫婦の私たちは、まさに“シノラーブーム世代”です!)。
正倉院や宝物好きの方はもちろん、『蘭奢待』の香りを体験してみたい方、日本史や美術を学ぶ学生さんにもおすすめです。
来場者全員が無料で音声ガイドを利用できるので、スマホ・イヤホン・ヘッドホンをお忘れなく!
他のミュージアムの記事、上野の記事、谷根千の記事、障がい者割引の記事はこちら。
※トップ画像は《再現模造》の『螺鈿箱(らでんのはこ)』。
※写真・動画(連続1分以内)撮影が可能。フラッシュの使⽤、⾃撮り棒、三脚等の撮影補助機材の使⽤は禁止。
※訪問前は上野の森美術館公式サイトで最新の情報を確認してください。
※記事内の価格・情報は、訪問当時のものです。


アクセス・車いす貸出

アクセス・車いす貸出の詳細は過去記事『五大浮世絵師展』の《アクセス》をご覧ください。
料金・障がい者割引
料金
当日券 | |
一般 | 2,300円 |
高校・大学生 | 1,700円 |
小・中学生 | 1,100円 |
未就学児は無料。学生の方は学生証を提示してください。
障がい者割引
障がい者手帳保持者とその介助者1名まで、当日料金の半額で入館できます。事前購入は不要です。
対象の手帳は、身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳です。
チケット売り場にて、上記の障がい者手帳、または障がい者手帳アプリ「ミライロID」を提示してください。
混雑状況・所要時間など
混雑状況

土曜日の15時10分頃に入館しました。並ぶことはなく、すぐに入ることができました。
2025年5月31日(土)に訪れた展覧会『五大浮世絵師展』と比べると、今回は混雑が少なく、車いすでも快適に観覧できました(参考記事:展覧会『五大浮世絵師展』)。
スタッフの方によると、この日は東京会場限定グッズ「蘭奢待香りカード」が品切れ中だったため、比較的空いていたそうです。
とても人気のある商品で、たびたび品切れになるとのこと。「どうしても手に入れたい!」という方は、展覧会公式Xをこまめにチェックしてください。
混雑を避けたい方は、やはり平日が狙い目です。
週末に行く場合は、昼食の時間帯か15時以降が比較的ゆったり観覧できるようです。
なお、会期末が近づくほど混雑が予想されるので、早めの来館をおすすめします。
所要時間
15時10分から閉館直前の16時50分までの約1時間40分かけて観覧しました。
じっくりと観覧したい方、特設ショップでゆっくり買い物をしたい方などは余裕を持ち、3時間は想定しておくと良いかと思います。
バリアフリー情報
会場は1階と2階にあります。車いすをご利用の方も、エレベーターで2階にアクセスできるため問題ありません。
会場内は全体的に平坦で、バリアフリーに対応しています。
ただし、混雑時には車いすでの観覧が難しくなる場合もあるため、平日の来館をおすすめします。
べたきち的見どころ

鮮やかな唐花文様《花氈》

花氈(かせん)は、唐花文様(からはなもんよう)が全面にあしらわれた、羊毛製フェルトの敷物。
唐(とう)から船で伝わったと考えられており、当時の高度な技術を物語っています。
織物好きのべた妻にとっては、注目の逸品でした。
聖武天皇も、きっとこうした鮮やかな敷物に囲まれて暮らしていたのでしょうね。
織物や染織に関心のある方は、ぜひ『インド更紗展』の記事もご覧ください。

圧巻の再現模造!《螺鈿紫檀五絃琵琶》


螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)は、歴史の教科書でも必ず目にする、正倉院を代表する宝物のひとつ。
世界で唯一現存する五絃琵琶としても知られています。
紫檀(したん)という高級木材に、螺鈿(らでん)や金銀で豪華な装飾が施されており、その美しさはまさに圧巻です。
学生時代に南の島でお魚の研究をしていた、べたきちが特に注目したのは、螺鈿の材料として使われているヤコウガイ。
このヤコウガイは、とても大きなサザエの仲間で、殻を磨くと美しい真珠層が現れ、今でも装飾品の素材として人気があります。
実は我が家にも、大きなヤコウガイの殻を飾っています。
食べてもとても美味しいので、沖縄などに行かれた際は、ぜひ味わってみてくださいね。
貝に興味のある方は、ぜひ『貝類展』の記事もご覧ください。

天下第一の香木を再現!《蘭奢待の香り》


『蘭奢待(らんじゃたい)』は、正式には『黄熟香(おうじゅくこう)』と呼ばれる、日本で最も有名な香木です。
歴史上の多くの偉人を魅了し、足利義政や織田信長、明治天皇など、時の権力者たちが一部を切り取って使用してきたと伝えられています。
今回、その天下第一の名香『蘭奢待』を、最新の分析によって再現した香りを実際に体験することができました。
複雑で甘みのある、なんとも言えない良い香りでした(語彙力不足⋯!)。
香木の産地は、ベトナムからラオスにかけての山岳地帯とされています。
ラオスにJICA海外協力隊として派遣されていたべたきちとしては、驚きとともに、どこか親近感を覚えました。
ラオス関連の記事もいくつかありますので、ぜひそちらもご覧ください。

現代でも通用するデザイン!《紺玉帯》

『紺玉帯(こんぎょくのおび)』は、数多くの紺玉で美しく飾られた革帯。
べた妻は、そのおしゃれなデザインに感嘆し、しばらく見入っていました。1300年も前のデザインとは思えないほど、洗練されていますね。
この“紺玉”とは、『ラピスラズリ』と呼ばれる、鮮やかな青が特徴の天然鉱石のこと。
主にアフガニスタンで産出され、古代から顔料としても珍重されてきたことで知られています。
美術好きの方なら、ヨハネス・フェルメールの代表作『真珠の耳飾りの少女(別名:青いターバンの女)』などに使われた、あの『フェルメールブルー』の原料として記憶している方も多いかもしれません。
紺玉の持つ色彩の美しさは、時代や場所を超えて、人々を魅了するんですね⋯!
ちなみに、「フェルメールと浮世絵の青」について紹介している以下の短いYouTube動画は、今後の絵画や浮世絵観賞の参考になるのでおすすめです。
皇室に受け継がれる蚕《小石丸》

『小石丸(こいしまる)』は、日本在来種の蚕の一種で、極めて細く美しい絹糸を生み出します。
その繭は小ぶりで、くびれのあるかわいらしい形をしているのが特徴です。
現在では、宮内庁の養蚕所で飼育されており、歴代の皇后陛下が御養蚕を続けてこられたことでも知られています。
この『小石丸』からとれる絹糸は、古代の絹糸に近い性質を持ち、宝物の『再現模造』の制作にもたびたび使われているそうです。
実は私たちは、2025年の夏休みに長野県を旅行した際、『岡谷蚕糸博物館』でこの『小石丸』の繭に出会っていたので、とても親しみを感じました。
『岡谷蚕糸博物館』については、また改めて詳しく書きたいと思っています。とても学びの多い博物館で、おすすめです。

篠原ともえ作製ドレス《LACQUERED EWER SHOSOIN DRESS》


1990年代後半に“シノラーブーム”を巻き起こし、現在はデザイナー・アーティストとして活躍している篠原ともえさんが手がけたドレス『LACQUERED EWER SHOSOIN DRESS』。
このドレスは、水瓶『漆胡瓶(しっこへい)』をモチーフにデザインされたもので、全体には多くの動植物文様が美しくあしらわれています。
篠原さんのInstagramをフォローしているべた妻は、制作過程の投稿を見ていたようで、熱心に見入っていました。
特に、印象的なケープカラーのデザインがすっかりお気に入りになったようです。
ファッション関連の記事もいくつか書いているので、興味のある方はぜひそちらもご覧くださいね。
最後に
『正倉院 THE SHOW』は、まさに1300年前の正倉院の世界へ没入したかのような、貴重な体験のできる展覧会でした。
『再現模造』はもちろん、超高精細映像や、香りを体験できるコーナーなど、展示方法にもバリエーションがあり、誰もが楽しめる展覧会だと感じました。
観賞後には、今度は“本物の宝物”を見たいという気持ちが強くなりました。
毎年秋には奈良国立博物館にて正倉院展が開催されているそうなので、今後ぜひとも訪れてみたいです!
まだまだいっぱい見どころはあるので、ぜひ現地で個人的見どころを発見してください!
また、観賞後には、歴史を感じながら、谷根千散策もしてみてくださいね。
ぜひ他のミュージアムの記事、上野の記事、谷根千の記事、障がい者割引の記事もご覧ください。

開催情報
名称 | 『正倉院 THE SHOW―感じる。いま、ここにある奇跡―』 |
会期 | 2025年9月20日(土)~11月9日(日) |
開館時間 | 10時~17時 (入館は閉館の30分前まで) |
休館日 | 会期中無休 |
入館料 | 一般 2,300円、高校・大学生 1,700円、小・中学生 1,100円 未就学児は無料 障がい者手帳保持者とその介助者(1名まで)は当日料金から半額 |
会場 | 上野の森美術館 |
所在地 | 〒110-0007 東京都台東区上野公園1-2 |
アクセス | JR上野駅「公園口」より徒歩約3分 |
公式URL | https://shosoin-the-show.jp/ |
最後までお読みいただきありがとうございました。ソークディー!




